2013年シーズン第30節 ジュビロ磐田 vs 清水エスパルス

磐田が降格の危機に瀕していることもあっていつも以上にテンションが高かった静岡ダービー。満員のヤマハスタジアムで両チームの応援がこだまする最高の舞台で、両チーム共に気持ちのこもったインテンシティの高い好ゲームを見せてくれた。今期のベストゲームだったと思う。

序盤は飛ばして入った磐田のペース。磐田のチェックが鋭く清水はボールを運べない。逆に清水の右サイドから度々クロスを上げられる展開。だが、クロスの精度が低く、また守備陣の集中力が高く中の選手を離さなかったこともあり、この時間帯をきっちり抑えきった。この立ち上がりの25分は観ていてあっという間に過ぎた濃密な時間だった。
そして磐田のペースが落ちるとともに清水が主導権を取り始める。25本のFKが清水に与えられたことからもわかるように徐々に磐田を押しこむ。だが、なかなか歓喜の時は訪れない。スルーパスに抜けだした大前のシュートは駒野がブロック。村田の素晴らしい突破から、村田、大前と連続して決定的なシュートを放つが、いずれも松岡がライン上でクリア。逆に金園の裏抜けや、ロングボールのこぼれ球に反応した前田のシュートにヒヤリとする。
試合が動いたのは80分。カルリーニョスのハンドで得たPKを大前が冷静に決めて清水が先制。そこからはリスクを負って磐田が猛攻を見せたが櫛引を中心にゴールを許さない。清水が0-1で勝利した。

とにかく試合の入り・集中力が素晴らしかった。ピンチの際に2名が同時に体を投げ打って守るシーンが2度ほどあった。大前は惜しみなく守備でもスプリントを繰り返していた。そしてその結果が久々の無失点勝利、しかも今期2度目の警告なしである。選手・スタッフはもちろん、それを平日の練習から後押ししたサポーターたちが誇らしい。
ここ最近、序盤での不用意な失点が多く試合の入りで失敗することがあったが、その失敗を見事大一番で活かした。また、起用当初は不安定さを隠しきれなかった浩太のCBは非常に安定していた。加入当初はまったくチームに貢献できなかった村田はレギュラーポジションを伺える活躍を見せており、レギュラー争いは益々激しくなるだろう。先週の翔の活躍もそうだが、ここに来て今までの我慢の成果が徐々に現れ始めているのが嬉しい。

短評
GK 櫛引 MVP。立ち上がりはナーバスだったが、セーフティなプレーから調子を上げていく。終盤は神がかり的なセーブを連発、キック精度も良くなっていた。個人的にはこの完封で少しゆとりが出ると嬉しい。
DF 石毛 序盤こそ劣勢に晒されたが、粘り強く対応。後半は危なげなかった。
平岡 キャラが当たって平岡がカバーするやり方よりも、平岡が当たって浩太がカバーするほうが、平岡にとってはやりやすいのかもしれない。安定した出来栄え。
浩太 長年CBを務めてきたようなプレーを披露。
吉田 怠らず努力を続けてきたことが報われる。攻撃のタスクが減ったことも守備の安定に繋がったのかもしれない。気迫のこもった良いプレーだった。
MF 本田 やはり彼がいると中盤のグレードが一つ上がる。
村松 惜しみなく90分間プレッシャーをかけ続けた。本田とのコンビは良好だった。
FW 高木 退場後の表情から、この試合に賭ける思いは伝わった。軽症だと良いのだけれど。
村田 大きな大きなPK獲得。安永のコメント通り、役割が整備されたこと・周囲が彼を理解したことが大きい。安定したクロスの精度、鋭い縦への突破力。ジョーカーとしてベンチにいると非常に心強い存在だが、一気のスタメン奪取もありうる。
ラドンチッチとの初コンビのためかあまり輝けなかったが、守備面で貢献。
ラドンチッチ ボールの預けどころとして活躍するが、ラストプレーの精度が今ひとつ。
大前 豊富な運動量で精力的にプレー。少し足がもつれ始めた時間帯・プレッシャーのかかる状況で冷静にPKを決める。
監督 ゴトビ ベストメンバーが揃った際に4-2-3-1を選ぶのか、4-1-2-3を選ぶのか、スタメンには誰を選ぶのか。嬉しい悩みだと思う。ここまで選手層が厚くなったのは機を見るに敏だったフロントと我慢し続けたゴトビの手腕だと思う。
試合後のサポーターの騒動について

試合後から各所で取り上げられているが、クラブが謝罪するにまで発展してしまった。
10/27ジュビロ磐田戦における一部サポーター行為に対するお詫び

この件に関しては、思いは複雑で自分でもあまり整理がついていないのだが、率直に書いてみる。大前提としてあの行為は良くないことだったとは思う。

  • あれらがテレビに映った瞬間、不快だった。内容もさることながら、その数にも驚いた。あの数はまったく予想できなかった。
  • リーグやクラブの価値を損なうことをやってはいけない。相手に不快なことをやられたと言って、同じレベルに落ちる必要はない。今回、同じレベルにまで落ちたことは残念。
    • 試合前から、試合に勝った際の煽りの是非みたいな話はネット上で行われていて、否定派からクラブに迷惑をかけるなという意見が多数あった。それだけの感情があったのだろうが、自分の気持ちよりクラブの品位を優先して欲しかった。
    • 当事者たちはこれで一般人やスポンサーが離れたりしたら、どう思うのだろう。多分、本意ではないはず。
  • この試合は警察沙汰が起きるのではないかと危惧していた(起きなくて良かった。両チームの運営や警備関係者にも感謝)。その点を懸念していたので、この騒動については、それだけで済めば御の字というのも正直な気持ちとしてある。
  • 磐田サポが、これで清水を嫌いになった・より嫌いになったと怒りをぶつけるのはわかる。一般人が恐怖を覚えたり、他サポがリーグの価値を損なうなと怒るのもわかる。でも、磐田サポに傷つけられたと言われたり、一方的に清水だけが悪いと言われると、心中穏やかではいられない。我ながら器が小さいのだけれど。

公式の「本来、横断幕や応援コールは応援するチームを鼓舞し、後押しするものであるはずです」という声明はまったくそのとおり。今後、このようなことが起きないようにしないといけない。…自分も意識を改めないといけないのだろう。